急停止と急発進


この「攻撃からの攻撃」に絡めて強調したいのは、ある動作からまたある動作へ移行する際のエネルギーの効果的な使い方です

動きを急停止すると、バランスが崩れそうになることがあると思う。車は急に止まれないという現象と同じで、身体に無理が生じているということだ。この崩れそうになる現象を抑えることも練習ではあるが、逆に応用することもまた練習である。二つを使いこなせれば、戦術のパターンが広がるだろう

つまり姿勢が崩れるということは、急停止したエネルギーが身体にこもってしまうからであるわけだが、このエネルギーが厄介を引き起こすばかりでなく、なによりももったいない。そこでいっそのこと、このエネルギーをさらなる動き――急発進――に転化してみてはどうだろうか

具体的に説明します

例えば、打ち下ろしのパンチを相手の顔面に打ったとする。当たろうが当たるまいがそのパンチの動きを急停止した瞬間に生じるエネルギーを利用して、さらに別の角度から顔面に打つことも可能だし、あるいはボディに打ち下ろしてもいい。むろん、この動きは打ち上げの動きからも可能である

相手にとっては気の毒なことで、攻撃は永遠に終わることはない

同じ要領で、移動を急停止するエネルギーを利用し、様々な方向に移動することも出来るし、あるいは攻撃のエネルギーに転化することも可能

そもそもこの「急停止から急発進」の技術に気づいたのは、以前の僕の弱点である身体バランスの悪さに起因する。パンチを強振するたびにバランスを崩してしまい、前につんのめっていたのだ。あるとき練習に疲れ切ってしまい、強振したエネルギーをそのままにして、身体を移動させてしまったのだ。そのとき、足の力に頼らない移動が出来たように感じた

スポーツ的な常識からすればこのような移動はみっともないのかもしれないが、僕は見栄より実利をとる。バランスの悪さが矯正されたあとにもこの技術を使い続けている。そう、弱点が新たな技術を生むことがあるのだ


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